輝き ~ 脱・三日坊主計画

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特集:電車通学の現実 ~ 5つの観点で考えよう

はじめに

ゴールデンウィークが明け、新入生も大学生活に向き合ってきているようで、大学の雰囲気もだんだん見慣れた景色に戻りつつある。一方で5月病というワードもあり、このゴールデンウィーク明けは以前描いていた自身の理想に対して残酷な現実が直面しやすい時期でもある。1ヶ月前と比べると学内の人口密度は減りつつあるようだ。

大学入学1ヶ月後、私が直面した現実といえば、他でもない電車通学の現実である。

中学から高校へ進学する場合は、実家が島嶼地であったり、もしくは望みの高い私立高校への進学などでない限り、実家から直接高校へ通学するケースがほとんどと思われるが、大学へ進学する場合は親元を離れて下宿を始める学生が一気に増加する。いま私が通う電気通信大学は唯一地名がつかない国立大学というアピールをするくらいに全国に開かれた大学であり、関東圏こそ多いものの出身地は多種多様である。

電通大は東京都調布市に位置する。関西とか東北のような、明らかに関東圏ではない地域に実家がある者ならば合格が決まり次第、もしくは合格が決まるよりも前から大学周辺の部屋探しを始めることだろう。しかし、関東圏に実家がある学生となるとどうだろうか。
大学の最寄り・京王線調布駅優等列車の大半*1が停車する利便性の高い駅である。そして、京王線は首都圏の中でも電車の本数が多く、日中でもホームに2,3分待っているだけで電車がやってくる。また、関東圏自体、電車による移動が充実しており、実家がよっぽど鉄道不便な地域にない限りは電車による通学が可能である。ほかの東京圏にある大学についても、同じことが言えるだろう。本来、学生であるという時間を尊重するためには無理に電車通学をするよりは下宿をすることが間違いなくベストなのだが、精神的、金銭的な面などを考慮に入れるとそうは言っていられない。学生定期券というのは、極めて破格の安さを誇るのだ。

どのくらいの所要時間が電車通学に適しているのか、本来は下宿をするべきである距離なのに無理をする羽目にならないかなどといったことは、大学合格の時点ではなかなか分かりにくいのではないだろうか。私は今でこそ下宿をしているが、入学してから3年間は片道2時間以上かけて電車通学をしていた。昨日まで帰っていた栃木の実家からである。しばしば驚かれるが、これは金銭的な理由を優先していたことが理由である。 入学当初は2時間の通学なんて余裕だろう、とたかを括っていた。しかし通学を続けるうち、講義の課題・レポートやサークル活動に押された結果、自身の思い描いていた理想の通学とは反する現実に直面していることに気づいていった。

一人暮らしをすること、実家から通学することそれぞれのメリット・デメリットについては、ググればいろんなサイトに記されているだろう。うまく取捨選択してメリット・デメリットについて勘案してほしい。しかし、理論上は電車通学が可能な学生が、どのような点を考慮して一人暮らしをするか実家から通学するかを選ぶことについては、メリット・デメリットの話に比べるとあまり話題に上がらないものである。そこで今回は私なりに、どの点を基準に大学への通学手段を考えるべきかを、5つほどリストアップすることにしてみる。

5つのキーポイント

通学時間

まずはじめにキーとなるのは通学時間だろう。自身の生活リズムに支障をきたさないレベルで大学へ通学することが可能かどうかを考慮するべきである。特に、1限目に余裕で出席できることを基準に考えなければならない。

ケーススタディ

電通大のケースを例にしよう。1限目の開始は9:00である。9:00になった時点で着席していないと遅刻扱いとする教員もいるので、もうちょっと前に大学の教室に到着しているべきであろう。すなわち、15分前くらいには大学の正門を通過できるくらいであることを考える。そして、調布駅のプラットホームから、大学の正門までは数分である。ちょっとコンビニや西友で飲み物を買ったりするくらいの余裕も考えると、到着が8:30前後の電車で来れば十分な余裕をもって1限に間に合うだろう。 さて、この時間前後に調布駅に到着する電車を、私の実家の最寄り、小山駅からYahoo!乗換案内で検索してみよう。小山には東北新幹線が停車するが、学生として贅沢な乗り物に毎日は乗っていられない*2。他にも様々な理由があるため、在来線オンリーで通学するとしよう。すると・・・ f:id:wktk037:20180308231311p:plain あれ?乗り換えが2回?赤羽乗り換え?しかも6:29発車?
しかしよくみると、新宿駅の乗り換え時間が異様に長い。そうだ、歩く速度を確認していなかったのだ。確かにJR埼京線のホームから京王線のホームはちょっと距離があるが、朝の混雑でも慣れてしまえば5~6分で十分余裕に乗り換えられる。西武新宿駅から来るんじゃあるまいし。というわけで、歩く速度を「急いで」にして再度検索してみよう。 f:id:wktk037:20180308231703p:plain これだこれだ。私が電車通学していた時は6:38の電車に乗っていたのだった。というわけで、実家の最寄り駅にはこのくらいに着いていなければならない。さて、起床をして朝食をとり、家を出て駅に着くにはいったい何時くらいに起きれればいいだろうか。幸い駅から実家はそれほど遠くなく*3、朝食は親が用意してくれていたが、起床から余裕を持って電車に乗るまでには1時間ほどかかっていた。というわけで、1限に間に合うためには5:30には起床していないといけない。現在の状況を考えるとどうしてこんな条件で3年間も通学できていたのか末恐ろしいものである。

以上の条件は実体験であるが、極端な例といっても差し支えないだろう。このような条件がどう響くだろうか。
最大の問題は睡眠時間が短くなることである。特に4学期(第2学年の後期)は、取りたい講義の都合により毎日1限から講義を受けることになった。当然ながら帰りもこの時間だけ電車に乗ることになり、1日あたり4時間以上の時間を移動に取られることになる。そして、講義で出題された課題を解いたり、復習をしたりするための時間も確保しなくてはならなかったため、必然と睡眠時間も削られることになった。行きの電車は全区間座ることができたため、その時間に眠ったりもしたが、布団の上で寝ることに比べれば断然睡眠の質が悪い。結局布団の上で寝ることができたのは平日は6時間を切っていた。これが原因で、この時期は講義でも眠気が酷くなり、まともに講義を聴いていられないという状況に陥った。3年生になるまでの間では、単位こそ落としていないが成績も一番最悪となってしまった。さらに、睡眠時間が短いことがストレスとなり、私は行きの電車でしばしば腹痛を起こしていた。宇都宮線の電車にはトイレもあるが、腹痛を催す頃には東京にだいぶ近づいていて車内の混雑が激しくなり、トイレに向かうことすら難しい。結局、乗り換えの新宿駅まで我慢するという日々が続いた。

そういうわけで、この通学時間は生活に歪をもたらしていて、少なくとも私にとっては無理があったのだ。通学時間の限界の長短は人それぞれではあるが、体に影響が出てくるのであれば人間としての生活として成り立っていないといえる。1ヶ月も通えば、自分自身が一番体調の変化を理解するはず。この時点で気にかかることがあれば、周囲に相談を持ちかけてみてはどうだろうか。

遅延の可能性

首都圏の鉄道特有の問題として、電車の定時性の悪さという問題がある。前述した乗り換えというのは、電車が遅延しないことを前提として成り立つわけだが、残念なことに毎日この乗り換えが成功することはない。集中混雑、人身事故、車両故障などなど、首都圏の鉄道網では交通が麻痺する要素が幾重にも連なっている。特に乗車区間が長い場合、実家の最寄り駅では定時に動いていても、東京へ向かうにつれて遅延が酷くなることはザラだ。なんとも理不尽な話なのだが、こればかりはどうしようもない。しかし、こういった現象もストレスになるものだ。大学の教員の中には電車通学の辛さを知らないのだろうか、「遅れを見越して1本前の電車に乗れ」とか訳の分からないことを言ってきたりする人間もいる。こちとら1本前の電車は20分前*4だぞ、定時で動いていたのにその後になって遅れが起こるとか知るか。
首都圏の場合、高密度運転の中央線快速、山手線の西側へ直通する埼京線、千葉方面からやってくる総武線、そのバイパス路線である東京メトロ東西線、そして神奈川北部を経て渋谷へ向かう東急田園都市線あたりが遅延を起こしやすい路線として有名だろうか。これらの路線を一部区間でも利用して通学する場合は注意が必要だ。

車内のQOL(混雑・着席保証・その他)

満員電車が好きだという人間はそうはいないだろう。座っていても立っていても自身の占有区間は限られるし、加速減速で体を振り回され、周りの人の波に押される。とにかくストレスを溜めやすい空間である。

着席できるかできないかでストレスはかなり変わってくる。私は行きはほぼ確実に座って行けたが、帰りは途中までほぼ確実に立っていなくてはならなかった。しかしこれはまだいい方で、もう少し都心に近かったら、行きも帰りも座れないだろう。首都圏の場合、電車始発駅で乗車待ちでもしない限りは朝は座れないはずだ。
都心を少し離れたところでは、状況は少し変わる。宇都宮線の場合、茨城県古河駅以北まではだいぶ過疎っているため、場所さえ選ばなければ朝もどこでも座れるのだが、だんだんと席が埋まってきて、久喜駅を過ぎるか過ぎないあたりでは会社員同士が座席を巡ってバトルになっていたのを通学中に何度か見たことがある。座れれば新宿まで60分ゆっくりと眠れるが、座れなければよっぽどのことがない限り新宿駅までは座れないだろう。駅に止まっては混んでいく車内にただ呆然としながら移動先へ向かう惨めさを味わうことになる。

その他、満員電車は痴漢および痴漢冤罪の温床だ。昨今、冤罪を被った男性が線路へ飛び降りて電車を止めるという事例が多発している。女性は本当に痴漢の被害に遭わないか窮屈になるだろうし、男性は冤罪を吹っかけられないか不安になるだろう。鉄道会社も様々なアプローチでこの問題の対処に取り組んでいるが、残念ながらそうすぐには解決しない問題だ。不安を感じたり、実際に被害に遭っているならば狙われやすいという可能性もあるので、早急に満員電車を伴う通学から避けることを勧めたい。こればかりは金銭的側面を度外視して対処すべき事案だと考える。実際私の周りでも、何度も被害に遭って参ったため、一人暮らしを始めたという話も聞いている。しかも、それが私が乗っていた電車で起こっていたというから他人事ではないものである。

乗り換え回数

調布市京王線以外の路線が通っていないため、バス移動などを兼ねない限りは最終乗車が京王線になる。このため、乗り換え回数も自然と増えることになる。
私の場合、行きは必ず乗り換え1回で済んでいたため、これに関しては甘えでは?とも言われるかもしれない。確かにそうだろう。電通大へは、なんと電車を5本乗り継いでやってくる猛者もいる。以前、その地域に用があって調布から電車を乗り継いで向かったことがあったのだが、私にとってはとにかく面倒に感じた。休む時間さえないのだ。これを毎日成し遂げている人は尊敬するから、早いところ一人暮らしを打診してほしい。

個人的には乗り換え本数は、多くても片道で2~3回ぐらいにとどめたいところである。

終電・終バス

社畜大学生となると意外にバカにならないのが、終電や終バスの存在。飲み会やパーティーなどで二次会やら三次会やらが続いた時、下宿生であればいつでも適当に帰ることができるが、電車通学の場合はいざという時に周りから別れを惜しまれつつ終電に乗るか、いっそのこと夜が明けて始発電車が来るのを待つかという選択を委ねられる。また、一般に電車に比べてバスは最終車両の出発が早い。バスを利用して通学する必要がある場合というのは、鉄道駅を利用するには不便な立地に家があるということでもある。バスを逃してしまえば、最寄り駅にたどり着けたとしてもかなりの距離を歩いて帰らなくてはならないはずだ。高い金を払って、タクシーを呼ぶという手も一応は残されているが。いずれにせよ、何かのはずみで帰りが遅くなった際にいつもの道で帰れなくなるというのは不安要素だろう。

おわりに

長くなったが、以上が私が考えてみてポッと出てきた電車通学の選択基準である。繰り返しになるが、学生定期券はめちゃくちゃ安い。そういうことも手伝って、電車通学から下宿に切り替えるとなると出費が大きく違ってくる。大学4年目で下宿に切り替えた私も、家賃は奨学金で賄わざるを得ない状況である。しかし、学生である時間、体調の問題を考えると、金銭的な問題をどうにかしてでも切り替えるべきだったのだ。この記事に興味を持って見に来たあなたも、いずれその状況に突入する可能性があるかもしれない。電車通学が辛くないうちは私の知るところではないが、挙げてきた項目のどれか一つでも厳しいと感じることがあれば、抱え込まずに家族などに相談を持ちかけることを勧める。

なお余談ではあるが、家が遠いながら電車で通学を続けるのであれば、 twitter.com こちらのTwitterアカウントでもフォローしてみると「あるある」を感じれて面白いかもしれない。家が遠くなくなった私も、依然フォローしたままだったりする。

*1:2月から京王ライナーが運行開始するまでは全列車が止まっていた。京王ライナーは座席有料の列車であるため、運賃のみが必要な列車は全部が停車する。

*2:地域によっては自治体から補助金が降りて新幹線通学ができるパターンもあるらしいのだが、これは特殊なケースなので深入りするのはやめておく

*3:実際のところ、これが3年間通学し続けた最大の理由であった

*4:実際宇都宮線は朝は4,5分くらいに1本あるが、湘南新宿ラインに乗れないと赤羽で乗り換える羽目になるので除外