日常に突然出てくる高校数学の話 その1
記念すべき(?)12月最初の記事は、ちょっと理系っぽい話をば。
今日は朝は仕事、夕方は研究となかなか充実した一日であったのだが、思ってもいないところで高校数学を使う場面が突然2件出てきた。しかしながら、どちらとも大学受験期ならきっと簡単に解けていた問題であろうに、恥ずかしいことにネットで調べないと思い出せなかったのだ。自戒の念を込めて、またこのブログへのLaTeXの使用のファーストステップとして、読者にもわかりやすい形でぶち当たった問題について紹介していきたい。数学マニアにはなんでこんなのも分からないのかと言われてしまうほど簡単かもしれないが、そう思うくらいに解けそうなのに案外思い出せない不思議な問題である。
2点を通る直線の方程式の問題
図の-平面のを通る直線の方程式を求めたい。おいおいいきなりそんな簡単な問題かよ、それは覚えるべき公式の一つだろうと言われてしまうかもしれないが、少なくとも私は方程式がパッと出てこなかった。どうぞ揶揄ってください。
さて、その求めたい公式をここにパパッと出して、終わり!にするのでは単なるTipsにしかならないから、ここではしつこいくらい丁寧に導出していこう。
まず、この直線の方程式というのは一次関数であるから、ある定数およびを用いて
\begin{equation} y=ax+b \end{equation}
で一意に定まる。陰関数表記でで表されるとも言われることがあるがとりあえずそれは置いておこう。このことから、とりあえずとの値が分かればこの直線の方程式が求められる。点および点はこの直線上の点であるから、にその座標を代入しても成り立つ。すなわち、
\begin{equation} y_1=ax_1+b \end{equation} \begin{equation} y_2=ax_2+b \end{equation}
というおよびに関する連立方程式が成り立つ。この連立方程式から、とはを使って表すことができる。1番目の式から2番目の式を引くと、
\begin{equation} y_1-y_2=a(x_1-x_2) \end{equation}
と、式からを消すことができ、は
\begin{equation} a=\displaystyle\frac{y_1-y_2}{x_1-x_2} \end{equation}
となる。ただし、の時は分母が0になってしまうため、そもそもが求められずこの式は使えない。この場合に関しては後述することにし、とりあえずはを仮定して話を続けよう。
さて、が求まったから、どちらかの式に代入してやればをで表すことができる。1番目の式に丁寧に代入していこう(私はここで大きくミスった)。
\begin{equation} y_1=ax_1+b \end{equation} \begin{equation} y_1=\displaystyle\frac{y_1-y_2}{x_1-x_2}x_1+b \end{equation}
これをについての式に直してやることで、
\begin{equation} b=y_1-\displaystyle\frac{y_1-y_2}{x_1-x_2}x_1 \end{equation} \begin{equation} b=\displaystyle\frac{y_1(x_1 - x_2)}{x_1 - x_2}-\displaystyle\frac{x_1(y_1-y_2)}{x_1-x_2} \end{equation} \begin{equation} b=\displaystyle\frac{y_1(x_1 - x_2)}{x_1 - x_2}-\displaystyle\frac{x_1(y_1-y_2)}{x_1-x_2} \end{equation} \begin{equation} b=\displaystyle\frac{x_1 y_1-x_2 y_1-x_1 y_1 + x_1 y_2}{x_1-x_2} \end{equation} \begin{equation} b=\displaystyle\frac{x_1 y_2-x_2 y_1}{x_1-x_2} \end{equation}
お、これで求まったじゃないか。というわけで、求めたい直線の方程式は
\begin{equation} y = \displaystyle\frac{y_1-y_2}{x_1-x_2} x + \displaystyle\frac{x_1 y_2-x_2 y_1}{x_1-x_2} \end{equation}
と分かった。やったね。
・・・でもこの式、なんか汚くない?いや、確かに座標の値を入れちゃえば間違っちゃいないんだけど・・・
少なくとも高校数学をやっていた人ならば、式の形はこんなものではなかったようなと違和感を覚えるはずである。実際、日本の高校数学で教えられる公式はもうちょっと整った形だ。
実はは途中の式で出てきていたが、
\begin{equation} b=\displaystyle\frac{x_1 y_1-x_2 y_1-x_1 y_1 + x_1 y_2}{x_1-x_2} \end{equation}
とも書けるわけである。よく見て欲しい、この式の分子は
\begin{equation} b=\displaystyle\frac{y_1(x_1-x_2)-x_1(y_1-y_2)}{x_1-x_2} \end{equation}
という形に直せてしまうのだ(これを疑ってしまった人は実際に計算してみるのをすすめる)。そして、の項は分子と分母が相殺しあうので
\begin{equation} b=\displaystyle y_1 - \frac{x_1(y_1-y_2)}{x_1-x_2} \end{equation}
と変形でき、
\begin{equation} y = \displaystyle\frac{y_1-y_2}{x_1-x_2} x + y_1 - \displaystyle\frac{x_1(y_1-y_2)}{x_1-x_2} \end{equation}
となる。は左辺に移項すれば
\begin{equation} y - y_1 = \displaystyle\frac{y_1-y_2}{x_1-x_2} x - \displaystyle\frac{x_1(y_1-y_2)}{x_1-x_2} \end{equation}
となり、右辺も結合法則によって
\begin{equation} y - y_1 = \displaystyle\frac{y_1-y_2}{x_1-x_2} (x - x_1) \end{equation}
という式に変形される。高校数学で「公式」と言われているのはこの式のことであろう。先ほどの式よりもよっぽどコンパクトである。
そういえば忘れそうになっていたがの時はどうしよう。これは実際にそのようになるグラフを書いてみれば分かることであり、その直線はつまり軸と平行な直線ということになる。したがって、その式はの値に関わらずが一定になる式、
\begin{equation} x=x_1 \end{equation}
が方程式となるわけである。
ものすごく丁寧に解説していったが、私自身なるほどと思う問題であった。自分で記述してみて、「なぜこんな式なのだろう」という疑問が解決した気がする。